母上とお話をしましたよ
日記さん、聞いてください。ソード君がね、明日遊びに来てくれるそうなのですよ。
手紙に書いてあったのです。明日はバウドさんがお城に用事があるので、ソード君も一緒に来るって。
朝から行くから、二人でいっぱい遊ぼうねって。
明日、ソード君と一緒に遊べるのですよ。ボク、とても嬉しいです。
だってボク、とてもソード君と遊びたかったのです。ボクから遊びに行ってしまいたいくらいに。
こんなにソード君と会わなかったことって、ないのではないでしょうか。
お互いに何だか都合が合わなくて、全然会えませんでしたけど…… でも、やっと明日ソード君に会えるのです。ボク、嬉しいです。
でもね、日記さん。
ソード君の手紙を見て、ボク…… 何だか、不安になってしまいました。
昨日書いたボクの手紙が、ソード君に無理なことをお願いしてしまったんじゃないかって。
ボクはただ、また今度遊びましょうって書いただけなのですが。
本当はすぐにでも遊びたかったけど、ガマンしたのです。
でも、ソード君は優しいから。ボクの為に、無理に来てくれるのではないかと…… そう、心配になってしまって。
母上にご報告するのも、少し心配でした。
またワガママを言ったのですねって、叱られたらどうしようかと。
でもね、日記さん。その心配はありませんでした。
母上にソード君が遊びに来ることをお話したら、良かったですねって、母上も一緒に喜んで下さいました。
それに、母上は…… ごめんなさいって、言って下さったのです。
急にそんなことを仰るから、ボクは困ってしまって。
母上に謝っていただくことなんか何もないのに。ボクはまた何かしてしまったかと、色々考えてしまいましたよ。
そうしたら、そうではなくて。
この前、バウドさんが泊まって下さったことで母上からお叱りを頂きましたが、その事を謝って下さっていたのです。
貴方はワガママなんか言う子ではないのに、って。
ボクがそのことを気にして、自分の望むことを何も言い出せなくなってしまっては可哀想だって、母上は。
そんな、ボクはそんなこと気にしていないのに。
王子としてどうするべきか考えれば、母上の仰ったことは正しいのです。だから、謝っていただく必要なんてないのに。
母上こそ、ワガママなんか一度も仰ったことがないのに。
だからボク、申し上げました。母上こそ、もう少しワガママを仰っていただいて良いのですよって。
ご自分の望みを口にして下されば、ボクが何でも叶えて差し上げますって。
そうしたら、母上は、とても嬉しそうに笑って下さいました。
ありがとうディーン、って。
何だかホッと胸に染み込むような、そんな母上の微笑みでした。今でも、思い出すと胸が温かくなるようです。
ボクは、幸せです。
こんなに素敵な母上の息子に生まれて、本当に幸せな王子です。
それから、母上と一緒にお話をしました。明日バウドさんとソード君が来てくれたら、どうやっておもてなしをしましょうかって。
それでね、日記さん。すごいのですよ。
母上は、お二人の為にお菓子を作って下さるそうです。明日はご公務も少ないので、丁度良いからって。
母上のお菓子は、本当に美味しいのですよ。ボク、大好きなのです。
それに、ソード君と一緒に頂くと、もっともっと美味しくなるのですよね。バウドさんと母上もご一緒なら、もっともっともっと美味いのです。
ああ、明日が楽しみです。
おやすみなさい、日記さん。今夜はもう寝ます。
早く、明日になりますように。
ソード君に会いたいけど……
今日は、ソード君にお手紙を書きました。
最近ソード君と会っていませんでしたからね。何だか、淋しくなってしまって。
最近一緒に遊んでいませんねって、手紙に書きました。
今度また、一緒に遊びましょうねって。
ソード君は、バウドさんと一緒にしかお城に来ません。だから、バウドさんがお城に来ないと、ソード君にも会えないのです。
ボクが城下へ行けばもちろん会えますが、ボク、あまり城下に行く気がしなくて。
この前、母上からお叱りをいただいてしまいましたから。
いえ、お叱りではありませんよね。せっかくボクの為に忠告を下さったのに、それを叱られたなんて思っては、母上に申し訳ないのです。
ボクは、常に王子らしくなければいけません。
そう考えると、ひとりで城下をふらふらするというのは、あまり王子らしくないような気がするのです。
母上も城下にはよくお出かけになりますが、それは、女王としてですものね。
ボクがソード君の家に遊びに行くのとは、違うのです。
だから。
だから、もうちょっとガマンなのですよ。
しばらくの間、お城から出ないようにします。王子らしい振る舞いとは何か、よく考えてみるのです。
でも、日記さん。
それとこれとは別で、やっぱりソード君には会いたいのですよ。
ソード君と一緒に遊びたいです。
ソード君の優しい笑顔の側で、一緒にお喋りしたり、空想の旅に出たりしたいのです。
ソード君の手は、とっても暖かいのです。胸がじんと暖かくなるような、そんな手なのです。
だから、ソード君がぎゅっと手を握ってくれたら、ボクの気持ちも少し軽くなるんじゃないかなって。
そんなことを、思うのですが。
ソード君、君は今どうしていますか?
きっと、毎日毎日剣の修行に励んでいるのでしょうね。
ボクも、剣の修行は頑張っていますよ。勉強だって、魔法の修行だって欠かさないのです。
ソード君の頑張ってる姿は、すごくよく目に浮かぶのですけど。
でも、今は…… それよりも、ボクと一緒に笑っているソード君が見たいのです。
ソード君、遊びに来てくれないかな。
いえ、そんなことを思ってはダメですよね。これでは、バウドさんの時と一緒なのです。
王子がワガママを言えば、それは命令になってしまうのですから。
ボクは、ガマンをしなければいけないのです。
王子だから。
何かをして欲しい、なんて、自分から言ってはいけないのです。
ねぇ、日記さん。
王子って、これでも結構大変なのですよ。
今日は何もない日です
今日は、特に何もない日でした。
ソード君には昨日のうちに返事を書いてしまいましたし、特にまたお返事もなかったです。
母上は今日もご公務でお忙しいですし、ボクは今日も朝は鍛錬をして、午後はお勉強をしていました。
そうそう、午後のお茶は久しぶりに母上とご一緒出来たのですよ。
でも、母上はやはりお忙しいので、あまりゆっくりとお茶を楽しむことは出来ませんでした。
それに…… ちょっとだけ、しょんぼりしてしまって。
この前母上がお出かけになった時、バウドさんに泊まっていただいたでしょう。そのことを、母上に叱られてしまいました。
いえ、叱られたというほどではないのですが。
でも、バウドさんにご迷惑ばかりかけてはいけませんよって、ご注意を頂いてしまいました。
本当に、ボクもそう思います。
でも、ボクがワガママを言ってバウドさんを引き止めたわけではないのですよ。バウドさんが、ご自身で泊まって下さったのですし。
でも、いくらバウドさんがご自分でそう言ってくださったからと言って、それに甘えてしまったのは…… 王子として、配慮が足りなかったのかもしれません。
バウドさんが自分から泊まって行くって言ってくれたらいいなって、ボクは、確かにそう考えていました。
それは、口に出さなくても、ボクがワガママを言ってしまったのと同じことかもしれません。
遠慮するべきだったのでしょうか、ボクは。
ボクはひとりで大丈夫ですからって、そう言うべきだったのでしょうか。
でも、あの時ボクは、何だかとても身体が重くて。バウドさんに側に居て欲しいって、それしか、考えられなくて。
そんなボクを見かねて、バウドさんは言って下さったのでしょうか。泊まっていく、って。
本当は帰りたかったのに、ボクが頼りなかったから。
そうですね。
本当にそうだったのかは、わかりません。でも、ボクは遠慮するべきだったのです。
母上は、ボクが悪いとは仰いませんでした。
でも、いつもバウドさんに甘えてばかりではいけないと、そう仰いました。
ボクは王子だから、誰でもがボクに気を使ってくれるでしょう。でもそれは、その人が望んでいないことなのかもしれません。
だから、王子は甘えてはいけないのです。
王子だからという理由で、誰かに負担や犠牲を強いてはいけない。父上からも、そう教えられて来たのに。
ボクは、いつもいつも、バウドさんに甘えてばかりで。
バウドさんが、優しいから。
だから、つい、ボクは。
反省しなければいけないと思います。もう一度、しっかりと。
ねぇ、日記さん。
もしも、ボクが王子でなかったら…… もっと、バウドさんに甘えられるのでしょうか。
例えば、ボクが、バウドさんの子供だったら。
ねぇ、日記さん。
ソード君から手紙が来ました
日記さん、今日はね、ソード君から手紙が来たのですよ。
ソード君、無事に帰って来てくれたのですね。本当に良かったです。
昨日の夜に帰って来て、すぐに手紙を書いてくれたのだそうです。朝になって、お城の兵士を介して届けてくれたのですって。
ソード君から手紙を書いてくれるのは、珍しいのです。
いつもボクから書いてばかりで、たまにはソード君も書いてくれたらいいなーって思っていたのですよ。
ボクもソード君にお手紙を書こうと思っていたところだったので、余計に嬉しかったです。
お手紙には、道具屋のご主人の護衛でエルヘイムの森の奥へ行ったことが、色々と書かれていました。
お天気も良くて、絶好のピクニック日和だったそうですよ。
道具屋のご主人じゃなくて、ボクと一緒だったら良かったのになーって、そんなことを思ってしまったなんて書いてありました。
ボクも残念ですよ、ソード君。
ソード君と一緒にエルヘイムの森へピクニックに行ったら、きっと楽しいでしょうね。
昔はそうやってよく森へ行ったけど、森にも魔物が出るようになってからは、そう気軽には行けなくなってしまいましたからね。
この前みたいに、バウドさんとソード君に付いて来てもらって、護衛の兵士をつけて、それでやっと…… という感じです。今となっては。
少し、淋しいです。
そうそう、ソード君が居ない間にバウドさんが泊まってくださったこと、ソード君もバウドさんから聞いたみたいです。
すごく残念だって、書いてありました。
でも、楽しかった? とも書いてありましたよ。
親父がディーン君の役に立ったなら、まぁ良かったよ、なんて。そんなことまで。
ソード君ってば、面白いのです。
これでは、どちらが保護者なのかわかりませんね。
何となく、ソード君の方がしっかりしてるのかな? って思うこともありますよ、あの親子は。
もちろんバウドさんはとてもしっかりした方なのですが、いつもボクを楽しませる為にと、何だかおどけたような振る舞いをされるので。
それを諌めるソード君とのやりとりが面白くて、ボクは大好きなのですが。
ソード君は、本当にしっかりした人ですよ。
ボクよりも年下なのに、とても勇敢で、物事を良くわかっていて、ちゃんと周りに気配りの出来る人です。
今日もらった手紙にも、ソード君の優しい気持ちがいっぱいつまっているようでした。
親父だけが泊めてもらったのは悔しいけど、君が淋しい思いをしなくて良かったよ、なんて。
本当なら、怒ってもいいところですよね。
ソード君のいない間に、ソード君のお父上を勝手にお借りしてしまったのですから。ソード君がボクに怒ったって、仕方の無いことだと思います。
それなのに、ソード君は怒らないのです。
それどころか、ボクが淋しい思いをしなくて良かった、なんて。そんな風に、ボクのことを気遣ってくれて。
本当に優しい人です、ソード君は。
そんなソード君が、ボクは大好きですよ。
ああ、でもダメです。いくらソード君が優しいからって、それに甘えてばかりではいけませんよね。
ボクも、ソード君にいっぱい優しくしてあげなければ。
今度ソード君が遊びに来てくれたら、ソード君に優しくしてあげましょう。いつもボクに優しくしてくれる、お返しに。
また遊びに来て下さい、ソード君。
その時は、ぜひバウドさんも一緒に。楽しみにしています。
バウドさんのお役に立てたのなら……
日記さん、今日は母上が無事にお戻りになりましたよ。
ボクはちょっとだけ気だるい感じがして、午前中は部屋でゆっくりと休んでいたのですが、母上がお戻りになったと聞いたらすっかり元気になってしまいました。
お帰りなさいませ、母上!って、元気にご挨拶をしましたよ。
そうしたら、母上も嬉しそうに微笑んで下さいました。
貴方の笑顔を見ると何だかホッとしますね、って、そう仰られて。
そう思っていただけて、ボクは嬉しいです。ボクの笑顔が母上をホッとさせられるなら、ボクはいつもにこにこ笑っていたいです。
母上は少しお疲れになったそうで、今日はご自室でお休みになりました。
そうですよね、きっとお疲れですよね。一日だけとは言え、ブレイゲ山の麓まで行って来られたのですから。
ボクも母上の為に何かして差し上げたいと思ったのですが、大臣に止められてしまいました。
王子がまた騒がれては、女王様がゆっくりお休みになれませんぞって。
ボクは騒いだりなんかしないのに。大臣は失礼です。
でも、確かに、疲れている時は独りでのんびりとするのが一番かもしれません。
大臣の言うことにも一理あると思ったので、母上にご挨拶だけして、ボクも部屋に戻りました。
それに、ボクも何だか…… あまり、調子が良くなかったので。
何となく身体が重いと言うか、疲れが抜けてない感じと言うか。腰に力が入りにくいと言うか、そんな感じで。
バウドさんが、今日は無理をしないでゆっくりしていなさいって仰ってましたが。
バウドさんの言う通り、朝の鍛錬をしないで正解だったみたいです。
そうそう、日記さん。昨夜は結局、バウドさんが泊まって行って下さったのですよ。
ボク独りにしておくのは心配だからって、そう仰って。
ちょっと、恥ずかしかったけど…… でも、バウドさんが泊まって下さって、ボクはとても嬉しかったです。
何だかとても疲れてしまって、ベッドから起きるのもやっとって感じだったので、バウドさんが居て下さって本当にありがたかったです。
お水を飲ませて下さったり、着替えを手伝って下ったりして。
正直言うと、すごく恥ずかしかったのですが…… でも、バウドさんがボクの為にしてくださったことです。本当に、ありがたいのです。
男として当然のことだって、バウドさん、そう言って下さいました。
本当にありがとうございました、バウドさん。
ボク、嬉しかったですよ。
ただ、ボク、ソード君のことが心配だったのです。ソード君がひとりぼっちでお家にいるのでは、申し訳ないですから。
でも、そう思ってバウドさんに聞いてみたら、ソード君は丁度泊りがけでお出かけしているのだそうです。
道具屋のご主人がエルヘイムの森の奥へ薬草を採りに行くので、ソード君がその護衛を頼まれたのだそうで。
息子も居ないし、家にひとりで居ても淋しいからなーなんて、バウドさん仰ってましたけど。
それなら、ボクがお役に立てて、良かったのかもしれません。
ボクと一緒にいて、バウドさんが淋しい思いをせずに済んだのなら、ボクは嬉しいです。
ボクが少しでもバウドさんのお役に立てたなら、ボクは、幸せ。
そういう時は、いつでも泊まりに来て下さい。
母上がいらっしゃる時だって、バウドさんならきっと母上も歓迎して下さいます。
そう言ったら、バウドさん、ありがとうって笑って下さいました。
今度からそうさせていただきましょう、って。
父上、ありがとうございます。
父上のワインのおかげで、ボクは、バウドさんのお役に立つことが出来たみたいです。
ありがとうございました、バウドさん。
また、会いに来て下さいね。ボクは、いつでも歓迎ですから。
そう言えば、ソード君はもうお帰りになったでしょうか。
ソード君の旅のお話も聞いてみたいです。今度遊びに来てくれた時に、お願いしてみましょう。
明日は母上も元気になられるでしょうし、母上のお話も聞かせていただくのですよ。
楽しみですね、日記さん。
日記さんにも、ボクからお話してあげますからね。
おやすみなさい。







